人生を豊かにする音楽・居酒屋・旅にまつわる気ままなブログ

10月, 2010 のアーカイブ

ヤン・リシエツキとピアノの森

カナダ大使館主催で新進気鋭の若手カナダ人ピアニスト、ヤン・リシエツキのリサイタルに行ってきた。カナダ大使館には初めて入ったけどオスカーピーターソン・シアターという名のしっかりしたホールがある。

ヤンは1995年生まれだからまだ16歳。ポーランド国立ショパン協会の自主レーベルでショパンのピアノ協奏曲のCDが発売されているが録音した時はなんと14歳だったというから驚きだ。この日もポーランド人の両親を持つヤンお気に入りのショパンのピアノ協奏曲第1番-ピアノ・ソロ版やノクターンなど1時間半休憩なしで素晴らしいピアノを聴かせてくれた。演奏の合間には自ら英語で作品への想いを丁寧に語る仕草も清々しい。ピアノ界の石川遼って感じ。ヤンのピアノは特に右手、高音のタッチがキラキラして印象的。若々しさの中に作品に対する純粋な愛情と自分自身でピアノ演奏を心底楽しんでいる様子がよく伝わってきた。そこからマンガ『モーニング』に津連載されている「ピアノの森」の主役、一ノ瀬海と重ね合わせてしまった。アンコールでは舞台から「演奏中にどうぞ写真とってもらっていいですよ」と微笑みかけた16歳に今後注目したい。

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シモーネ・ヤングのブラ1

昨年ブルックナーのシンフォニーでレコ芸大賞も受賞したシモーネ・ヤングが同じハンブルグ・フィルハーモニーとブラームス交響曲第1番をSACD録音・リリースした。女性指揮者としてウィーン・フィルに初めて登場したことでも注目されているだけに期待が大きく早速購入した。これは評価が分かれるところだろう。私はどちら問われるとポジティブに受け止めた。

ただならぬテンポだが後ろ髪を引かれることなく始まる序奏からこれまでブルックナー交響曲で見せてきた独特の表現力を示す。提示部のテンポもほんの少し遅めで反復により提示部の説得を試みる。展開部以降は気づくとシモーネのテンポに自然と身を任せる自分がいる。ふと練習番号Iからトスカニーニ風にテンポ加速し、その挙げた拳は再現部Nにおいて自然と下ろされこの先どうなるのかという不安を一掃する。第2楽章も美しく各パートをしっかりと紡ぎ合わせる。第3楽章は軽快なスケルツォ。内にこもるブラームスではなくホールトーン生か音楽空間を演出し草原を駆け抜けるアルプスの少女ハイジ的(?)なイメージを重ね合わせた。終楽章の序奏部は意外とシンプルと思いきや急に練習番号Aから思い返したように本気度が増し練習番号BのPiu Andanteを迎え入れる。提示部のハ長調は開放的なテンポ感で自然体を貫く。練習番号Dからの八分音符のスタッカートで音楽の流れが止まるような感じる解釈はあまり好きになれない。第2主題も流れ展開部も再現部も自然体で重すぎるブラ1を期待すると裏切られるが、piu Allegroへの入りはバツグン。コーダは第1楽章序奏部を思い出させるゴージャスさで、ブルックナー同様に計算されつくしたしたたかさを感じた。音楽の世界は完全にDiversity… 次はどんな世界を披露してくれるか楽しみに指揮者だ。

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おやすみラフマニノフ

読書の秋でもある。様々なビジネス書と共に軽い新作小説も肩の力を抜いて気ままに楽しめる。数ヶ月前に読んだ真山仁氏の「プライド」(新潮社)の全6作の短編小説も子気味よい文章で楽しめた。真山氏の有名作でNHKドラマになった「ハゲタカ」につも通じる緊張感が持ち味。

この週末に読み終えたのが、中山七里氏の「おやすみラフマニノフ」。第8回「このミステリーがすごい」大賞を受賞した「さよならドビュッシー」に続く音楽青春小説だ。今回はラフマニノフのピアノ協奏曲第2番がテーマ作品となっている。前作にも登場したピアニストの岬洋介が大学講師で再び小説の中心的人物として登場している。この役柄、私のとってのイメージは王様のブランチのキャスターをやている谷原章介さん。もし映画化されるようなことがあれば是非とも彼でお願いしたい。事件は大学の楽器保管庫から2億円のストラディバリウスが突如消えたところから始まる。ミステリーなのでこれ以上シナリオに関わる話は差し控える。

おやすみラフマニノフ (『このミス』大賞シリーズ) おやすみラフマニノフ (『このミス』大賞シリーズ)
中山 七里宝島社 2010-10-12
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前作と同様に文中に専門的でかつ具体的なクラシック音楽用語がたくさん登場する。私が評議員を務めるロイヤル・チャンバー・オーケストラの名前も出ていたのには驚いた。相変わらずまるで本の中から音楽が聴こえてきそうな演奏表現は素晴らしいが、一箇所だけホント?と思うシーンがある。演奏会当日にオーケストラメンバー全員が定位置について始まるチューニングするシーンでコンマスがG線(ソ音)の開放弦を鳴らすという場面。もちろんその昔スメタナ弦楽四重奏団はD線(レ音)でチューニングをすることで有名だったが、普通はA線(ラ音)でしょう。これはわざとそう書いたのか校正ミスなのか知りたいところだ。
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ノーベル賞コンサート2009 DVD発売

今年もノーベル賞で日本人化学者がお二人も選ばれ、理系離れと言われる今日において同じ日本人として大変喜ばしい。昨年の12月、当にこのノーベル賞授賞式の期間中にストックホルムに出張していた。その際に偶然チケットを手に入れて聴きに行けたのがノーベル賞授賞者、スウェーデンのロイヤル・ファミリーも出席するNovel Prize Concert。ユーリ・テミルカーノフ指揮ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団に加えピアノのマルタ・アルゲリッチも出演した。そのコンサートの模様はコチラのブログを是非ご参照ください。

コンサート当日TVカメラが会場に入っていたのでDVDになるかなとは予想していたが、そのライブDVDが遂に発売された。当日のコンサートの興奮がそのまま伝わってくる素晴らしい演奏である。最後まで観ていてビックリ! なんと客席の自分がアップで2度も映っているではないか・・・なんと恥ずかしい。当日はブラックスーツにネクタイ指定だったのでラフな服装でなくスーツ着ててよかった。自分がアルゲリッチと同じ映像に収まっているだけで家宝にしたいくらい幸せ。。。

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上岡敏之&ヴッパータール交響楽団来日公演

注目の指揮者、上岡敏之がヴッパータール交響楽団と2度目の来日をした。私は協賛のブラザー工業社のご招待で10月17日の横浜みなとみらいホールでのオール・ワーグナー・プロを聴いた。翌日のサントリーホールでのマーラー交響曲第5番公演とどちらにしようか迷ったが、4月に上岡が日本フィルの定期で振ったワーグナーに魅せられ、これが小兵ヴッパータール交響楽団だったらどんな音楽になるんだろうと心躍らせてこの日を選んだ。結果は大正解で休憩を挟んで通常より長い2時間30分のコンサートは超大満足。序曲「ファウスト」に始まり楽劇「ニュルンベルグの指環」ハイライトという渋い根暗性格的なプログラムであったが、オケの演奏技術も高く、何より上岡と熱い絆で結ばれたオケが4月に本拠地の定期公演でこなしているプログラムだけに自信がみなぎっていて付け焼刃ではないワーグナー・サウンドに感動した。上岡が音楽総監督に就任するまでドイツの田舎オケだと思っていたが大間違い。木管のアンサンブル力、金管のいぶし銀の響き、弦セクションの安定感と、派手さはない代わりに落ち着いた響きが好感持てる。

予定されたプログラムが終了したのが2時間過ぎ。その後アンコールは何とベートーヴェン交響曲第3番「エロイカ」の第2楽章。名古屋と松本での公演曲目だ。これが上岡の新しいチャレンジとして凄い快速テンポ。そのテンポの中でのダイナミクスを微妙に使い分け抑揚がお見事。サイン会で質問したら「この葬送行進曲を一度ホンモノの4分の2拍子でやってみたかった」とのこと。前回来日時の記念盤のブルックナー交響曲第7番ではとてつもない遅いテンポに翻弄されたが、この「エロイカ」は逆・・・これCDにならないかなあ。

終演後のサイン会には100人くらい並んだんじゃないかな。その一人ひとりにサインと丁寧な応対をした上岡の紳士たる態度にもブラボー。もはや日本の指揮者界は桐朋出身ではなく芸大出身者が引っ張っていくのかも。上岡はこれから注目の指揮者であることは間違いない。

プログラム後半はコントラバスが1名減って7本になっていた。演出かと思いきや上岡曰く体調不良で途中棄権したのだと申し訳なさそうに答えてくれた。10月7日から全国ツアーをやって12日間で10公演。そりゃバテルでしょう。明日のサントリーホールでのマーラー交響曲第5番の成功を祈りたい。

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カラヤンのベートーヴェン77年東京公演ライブ

帝王ヘルベルト・フォン・カラヤンが蜜月時代の小兵ベルリン・フィルと来日しベートーヴェン交響曲ツイクルスを演奏した1977年の東京な普門館でのライブ録音がFM東京から一挙5枚発売された。これはカラヤン・ファンにとっては歴史的にも奇跡であろう。カラヤンのライブ録音、しかもベートーヴェン全曲・・・だからこそ希少価値。同コンピ2度目のベートーヴェン交響曲全集(1975年1月-1977年3月)の洗練されかつゴージャスなサウンドを踏襲しながらライブの高揚感が加わった名演である。このコンビの絶頂期の実力がライブで如何なく実証されている。

もちろん第7番冒頭のオーボエの普通では考えられない小節数の数え間違いによる大チョンボもある。(アマチュア・オケでもこんな失敗はほとんどないと思う・・・) しかしこの事実すらポジティブにカラヤン&ベルリン・フィルが人間集団だったことを再認識させてくれる。

第9番では録音機材のトラブルでマイク1本での収録となりまともな録音ができなかったと当時のプロデューサーの東条碩夫氏がライナーノーツで振り返っている。聴くとやはり他の8作品とは録音品質が違い、特に終楽章で合唱が入るとパランスに違和感はあるが、聴きこむとカラヤンは神かと錯覚させるだけの音楽がそこにあり気にならない。むしろ推進力のある凝縮された音楽の気迫が録音を凌駕さえしている。

圧巻は「運命」と「田園」。なんじゃ、このド迫力は・・・セッション録音のCD/DVDで聴いたことのないカラヤン&ベルリン・フィルの完全燃焼。私にとって月並みな作品だったはずの「運命」の終楽章はまるで別世界になっていた。その他に「英雄」も低音セクションからのずっしりとした構成力が抜群だし、第1番や第2番、そして第4番も今では聴けない帝王ならではの大上段アプローチが心地よい。

それにしても何故普門館だったのだろう。5,000人収容の大会場ってどんな音がしたんだろう。カラヤンは1979年と1984年の来日時にもこの会場をし使用している。もしこのベートーヴェン・ツイクルスの時にサントリーホールが完成していれば。。。

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ブルックナー交響曲第8番の新盤

msnブログからこちらに移行してブログとしての体裁もようやく整いちょっとやる気出てきた。先日のタワーレコード横浜モアーズ店でのオヤジ買いの中から、私のライフワークともいえるブルックナーのシンフォニーから今日は最近の最も壮大な交響曲第8番の新盤2枚を取り上げる。

まずはクリスティアン・ティーレマン指揮ドレスデン・シャターツカペレの2009年9月のCD。2012年に同楽団の主席指揮者に就任するティーレマンの定期公演ライブ演奏。予定されていたファビオ・ルイージの急病により急遽代役登板したティーレマンの一世一代の名演である。第1楽章からシュターツカペレ独特のくすんだ響きがハース版使用でより深みのある響きとなって聴き手に届く。第2楽章ではふっと宙に浮くようなスビドピアノにより音楽の奥行きを深める。音楽監督を勤めるミュンヘン・フィルの南ドイツ的な明るい響きと違うシュターツカペレとの相性は新鮮で抜群だ。某コンサルティング会社に勤務する知人はこのCDを聴いて興奮して仕事中にメール送ってきていた。ブルックナーオタクとしてその気持ちはよく分かる。

もう1枚は我らがミスターSことスタニスラフ・スクロヴァチェフスキ指揮読売日本交響楽団の2010年3月25日の東京オペラシティでのライブ。私は翌日のサントリーホールでの歴史的な定期公演を聴いた。その時の模様はコチラを参照ください・・・このCD、正直言ってガッカリした。当日の生の興奮をマイクが取られきれていないのだと思う。それとも東京オペラシティでの演奏はこんなものだったのかしら。金管がやけにオンマイクとなった録音は違和感がある。会場ではこんな平坦な響きじゃなかったはず ! ミスターSの解釈はなるほど天下一品なのだが、CDというデジタル媒体ではその興奮が伝わらない。 平林直哉氏のライナーノーツも私的すぎて勘弁してほしい。また解説書裏の写真は東京オペラシティではなく翌日のサントリーホールの写真が使われておりこれはまずいんじゃない ? サントリーホールでの公演は映像収録していたのでこちらのDVD発売を期待したい。。。

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朝比奈隆のレア盤

先日久し振りにCDをタワーレコード横浜モアーズ店で買いあさった。土日は戸塚カントリーで開催されたキャノンオープンを観戦し石川遼クンの追っかけやってたが、月曜日の体育の日はじっくりとCD鑑賞に浸った。今日はその中から巨匠、朝比奈隆のレア盤を2枚紹介したい。 

   

まずは倉敷音楽祭祝祭管弦楽団を指揮したベートーヴェン交響曲第3番「英雄」。1990年3月倉敷市民会館でのライブ録音である。これまでの大阪フィルのような大規模編成のオケの録音と違い、原田幸一郎率いる40数名の所謂室内オケとの「英雄」は細かいテクスチャーも明快で、特に弦と木管セクションがとても美しく興味深い演奏となっている。第1楽章冒頭のチェロのテーマからその足取りは堂々たるものでマエストロ朝比奈かならではの音楽だ。一方で臨時編成オケとしての限界はぬぐえず、特にトランペットとホルンは安定せず、会場のせいでもあろうが潤い感が不足しているのが残念。また、第1楽章結尾部の655小節からは原譜と違いトランペットに主題を最後まで吹かせているのは原点主義の朝比奈としては珍しいのでは? (過去の大フィルとの演奏をチェックする時間がなかったので・・・) もう一点我侭を言わせてもらうなら、同オケのメンバーリストを掲載して欲しかった。同コンビの演奏はこの後ベートーヴェンの第7番と第8番も発売されるらしいので楽しみにしておこう。

もう1枚は、朝比奈初のマーラー交響曲第4番。小兵大阪フィルとの1968年9月東京文化会館出のライブ録音である。ブルックナー指揮者として名高いマエストロはマーラーも数々取り上げていて、第2番「復活」や第6番「悲劇的」は私のお気に入りだが、この4番は初出。生涯に2回(一説には3回)しか演奏会で取り上げなかったらしい。楽器編成上はさほど大袈裟ではないし何故なのだろう。モノラル録音なのが残念でならないが、これがスゴイ名演だ。大フィルってこんなに上手かった? マーラーの中では古典的な部類のこの作品を、60歳になったばかりの朝比奈がインテンポ主義のベートーヴェン解釈とは違い気品あるアゴーギグで魅了する。最近発売されたゲルギエフ&ロンドン響よりも、一見古めかしいかもしれないが朝比奈の方が迷いのない一貫性のある強い主張を感じるのは私だけだろうか。演奏の中では第3楽章がとてつもなく美しい。天国に通じるこの音楽をどのような表情でマエストロは振っていたのだろうか・・・唯一心残りなのは終楽章の樋本栄のソプラノ独唱。朝比奈の重心の低い音楽にはちょっと腰軽な感じがする。

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