人生を豊かにする音楽・居酒屋・旅にまつわる気ままなブログ

3月, 2010 のアーカイブ

ありがとう、ミスターS

  
 
読売日本交響楽団常任指揮者のスタニスラフ・スクロヴァチェフスキの3年間の任期最後の定期公演をサントリーホールで聴くことができた。ミスターSが最も得意とするおよそ現在日本で聴ける最高のブルックナー交響曲第8番というプログラムだけに万難を排して行きたかったコンサートだ。もともと前日の東京オペラシティでの特別講演のチケットを購入していたのだがどうしても抜けられない仕事となってしまい泣く泣く諦め、知人の伝手に望みを託しSold Outだったサントリーホールでの本公演のチケットを融通してもらった。
 
この日は朝から落ち着かない。通勤電車の中でブルックナーのスコア(総譜)に目を通しておこうと仕事鞄に入れたのだが、ミスターSはノヴァーク版1890年第2稿を使用することがあらかじめ予想されたのに、なぜか間違って同じノヴァーク版でも1887年第1稿の楽譜を持ってきてしまうというおっちょこちょいをやらかしてしまった。午後になるとソワソワし、夕刻には後はみんなに任せたぞ!と東京ミッドタウンのオフィスを後にした。会場では2席隣に同オケ正指揮者の下野竜也さんの姿もあった。
 
いよいよ神秘的に第1楽章が始まる。深遠な響きがサントリーホールを埋め尽くす。オケも見事なまでに洗練され、サントリーホールの素晴らしい音響を味方にしてブルックナーの三次元の音楽が真正面から自分に向かって突き進んでくる。圧巻はアダージョ・・・まるで聖フローリアン寺院の神がサントリーホールに降りてきたよう。ハープは3本に増強。本当に涙が出てきた。そしてフィナーレ・・・10年程前になるザールブユッケン放送交響楽団とのCD録音時より早めの引き締まったテンポに支えられた推進力と一点の迷いもない確信に満ちたミスターSの音楽を聴いた人は87歳と誰も信じないだろう。読響ティンパニは圧巻。
 
最後の一音が鳴り終わっても聴衆はまだ終わらないでくれと言わんばかりの沈黙がホールを支配し、その後は割れんばかりの拍手とブラボーの嵐。下野竜也さんもスタンディングオベーションでブラボーを連発していた。カーテンコールは何回あっただろう。最後は楽員が退場しても聴衆は帰ろうとせず、ミスターSが何度もステージに登場。私もステージ袖まで言って大拍手。史上最高のブルックナーと言っても過言ではなくその生き証人になれたことが嬉しい。3年前のブルックナー交響曲第4番「ロマンティック」(2007年4月ブログ参照)を引っ提げて読響常任就任記念に登場した東京芸術劇場での大感動(CD発売を切望している。)、そして今回の第8番でのお別れ。就任ミスターS、本当にありがとう・・・
 
 
 

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アントニーニ&バーゼル室内管弦楽団のベートーヴェン

 
久し振りに週末にゴルフに行った。天候も良くもう直ぐ桜開花が待ち遠しい。往復のドライブで東名高速を快調に飛ばしながらジョヴァンニ・アントニーニが長年客演指揮者を務めるバーゼル室内管弦楽団とのコンビでチクルス録音中のベートーヴェン交響曲を大音量で聴きとおした。新しくSONY CLASSICALから発売された第3番「英雄」、第4番のカップリング(こちらは2枚組)と第5番「運命」と第6番「田園」のカップリング。それぞれ2007年から毎年録音されている。エームス・レーベルから第1番と第2番がリリースされた時は気にも留めてなかったのだが、下のCDジャケットがやたら目に入り、試聴した時のゾクゾク感が忘れられず購入した。
 
  
 
アントニーニはイタリアのバロック軍団、イル・ジャルディーノ・アルモニコを率いて過激な演奏が注目されているが、このベートーヴェンも毒気の多い演奏だ。最初はアプローチがP.ヤルヴィと似ていると思ったが、金管にわざと粗野っぽい吹き方をさせたりフレーズの抑揚とガット弦が織り成す鋭角的なダイナミズムも極めて豊かで、アントニーニの方がアクの強さにおいて異色を放っている。ピリオド奏法を強調し弦楽器の演奏人数も絞っていながらピッチは現代風というのも耳障りがよい。オケのメンバーは曲によって若干入れ替わっているためか、「田園」は第4・第5楽章で低弦セクションに怪しいところが数か所あるのがちょっと残念。でも、ベートーヴェンの古典の世界を新機軸で痛快に味わうことができたのは大きな収穫。金聖響もガンバってるけど、生粋のイタリアっ子には敵わないかぁ・・・そんなアントニーニのベートーヴェンもゴルフのスコアには全くいい効果として働かなかったのは自分の腕のせいでしょうね。
 
 
 

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居酒屋探訪-36: 新橋「まこちゃん」

 
新橋はサラリーマンの心のオアシスなのかもしれない。先般メディアパル社から「もつマニア」というマニアックな本が出版されて隠れたもつ料理ファンの間で話題になっているが、その全80件の中の一件が新橋ガード下通りにある「まこちゃん」だ。  
 
店内は広い。金曜日の夜ともなると、スーツ姿のグループや若いカップルに加えて女性同士のグループ客も多く見かけるのは、安心して楽しく呑めるからだろう。まずは、やきとんと言えばホッピーでしょ。あっ、そうそう、ホッピービバレッジ社のホッピーミーナこと、石渡美奈さんが三代目社長に就任して、「社長が変われば、社員は変わる!」という二冊目の本をつい今月出版したので読んでいるところだ。
 
 
 
もつ三種盛(950円)のコブクロ、ガツ、ハツの刺身も美味だったが、イチ押しは↑の写真の和牛ハツユッケ(550円)だ。普通の焼き肉店のユッケと違い、ハツなので細かく刻んでも微妙な歯ごたえが心地よい。気持ち良くほろ酔い気分で新橋駅に向かう・・・今度、ガード下あたりで見かけたら声かけてみてくださいな。。。
 
 
 

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フランク交響曲ニ短調

次回の俊友会管弦楽団の定期公演は5月1日にすみだトリフォニーホールでフランクの交響曲ニ短調を演奏する。チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲他との組み合わせは大曲が多い俊友会でも久々のスタンダードなプログラムとなった。このフランクのシンフォニーは私が九大フィルの2年生で生まれて初めてオケの舞台を踏んだ思い出の作品。その時も同じマエストロ堤俊作さんの棒だった。循環形式に基づいたこの作品はサン・サーンスの交響曲第3番「オルガン付き」と並んでフランス作曲家の代表的な交響曲作品として人気が高い。3つの楽章から成り立っているが、第3楽章で通常の倍速くらいの早いテンポで始まったマエストロ堤氏の演奏は30年前にもなるが今でも鮮明に記憶している。

 

そんな大学時代に演奏したフランクのチェロ・パート譜が自宅で見つかった。(右上の写真) 今回はブライトコプフ社の原譜(写真内左の茶色の楽譜)を使用するが、当時は九大楽譜庫にあったカルマス版をコピーしてオケの楽譜係が製本したもの。30年経って型崩れしていないその製本は見事。卒業以来初めて見直すとビックリ・・・ちょっと難しい音符に階名がドレミファで書きこんである(しかもシャープは○でフラットは△)し、どの指で押さえるかという運指が1234で表記されている。そうかぁ、大学に入学してチェロを始めた当時はヘ音記号がまともに読めなかったし。なんと懐かしい、若かったんだなぁ!!! それから30年もずっとチェロと付き合うことが出来て幸せだ。

フランクの交響曲ニ短調のCDでは、マルティノンも好きだけど帝王カラヤンがミュンシュの急逝によりパリ管弦楽団の音楽顧問に就任し初録音となった演奏がオススメ。ドイツ的などっしりした構成力は循環形式の単調さを見事に克服しているし、何と言っても官能的なカラヤンらしい表現力がいい。

 

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居酒屋探訪-35: 大船「白扇酒造」

 
春の暖かい陽気になってコートを脱いで居酒屋へと向かう。今回はJR東海道線の大船駅前にある「白扇酒造」を辻堂に住む会社の同僚と訪ねた。大船の銘店「観音食堂」に勝るとも劣らない、いや値段ではこっちが格段に安い! 
 
   
 
お品書きを眺めながら瓶ビールで乾杯して、ポテトサラダ(400円)とやりイカ糸づくり(600円)を注文。こういう店では生ビール・ジョッキじゃなく瓶からグラスに注ぎ合って呑むのがオツだね。おぉっ、ゴツゴツのジャガイモに玉葱の食感が見事にフィーチャーし田舎風味が酒のあてにピッタリ。見てくださいこのやりイカ、ツヤツヤでボリューム満点でしょ。             
 
ビールから酒に移る。ここは屋号にもなっている岐阜の白扇の樽酒を塩をちょこんと乗せた升で呑ませてくれる。ナミナミと一合入って500円。追加のおつまみはあわびの刺身。丸々1コに肝までついて700円は超安い。
 
  
 
平日は夜12時近くまでやっているとのこと。都内で呑んだくれるより、自宅近く(と言ってもふた駅先ではあるが・・・)の方が安心できる。これからちょくちょく通いそう・・・教えてくださった横浜「味珍」の常連の谷サン、ありがとうございました。
 
  
 

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ART GATE PROGRAM VII

 
春の兆しを感じた土曜日、家内と二人で三菱商事が主催する第7回ART GATE PROGRAMに出かけた。これは将来性のある美大生ならびに卒業生らの作品を1品10万円で三菱商事が買取り、一定期間展示後オークション販売をしてその売上金を芸術美術を志すアーティストの奨学金とするというもの。事実、日本の芸術大学生やその卒業生は作品発表の機会が少なすぎる。今回は仕事を通じて知り合えた元サザビーズ・ジャパン社長でこのプログラムを運営しているAGホールディングスの柴山哲治さんからのご案内で参加した。
 
 
 
会場となった三菱商事本社の大会議室ではシャンパンやワインが振舞われ、出品した若手アーティストたちの作品を鑑賞すると共に直接アーティストとの会話も楽しむ。アーティストは皆さん実直で自分の作品に対する思いを口べたに表現してくれる。楽しい対話に続いていよいよオークションの始まりだ。参加者はそれぞれ番号札の書いたパドルを手に柴山さんの流暢な進行で1万円から5千円ずつ金額を上げていく。今回は最高で30万円という落札作品もあったが、柴山さんが言うには過去通常は平均5-6万円らしい。
 
私も家内と一緒に目ぼしい作品にはパドルを上げて参加。この駆け引きが素人の私には難しい。でも、シャンパン・グラス片手に値踏みをして他の参加者と駆け引きしながらの緊張感は初めての経験で面白い。しかも売上金は全て若手アーティスト育成の奨学金になるのだから社会貢献の意味からも参加者の財布のヒモもちょっと弛むかな。
 
オークション全31作品の中から、下の「夏の輝き」という東京藝大を2008年に卒業した阿部泰介さんの作品を競り落とした。麻紙に岩絵具で描かれたひまわりは阿部さんが実家で育てて描いたもの。金箔と銀箔があしらわれていて作品の雰囲気を効果的にしているのが特徴。家内が花を題材にした絵が好きなので自宅の珪藻土の白壁の廊下に飾る予定だ。
 
 
 
オークション終了後、作者の阿部さんとお話。一緒に写真撮ろうと誘ったけど恥ずかしいということでご本人はこのブログには登場せず。4月に芸大日本画五人展というのを開催するらしいので観に行ってみようと思う。阿部さん、これからも素敵な作品を楽しみにしていますので頑張ってくださいね !!!
 
 
 

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東芝グランドコンサート2010

 
東芝グランドコンサートに今年もご招待いただいた。第29回を迎えた今回はサントリーホールでロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団の来日公演だった。指揮は2008/2009年シーズンから首席指揮者に就任したフィンランド出身のサカリ・オラモ。同オケは昨年12月にストックホルム出張時にノーベル賞記念コンサートで初めて接し、その密度の高いパワーに深い感動を覚えた。今回は諏訪内晶子をソリストに迎えてブルッフのヴァイオリン協奏曲とマーラー交響曲第1番他のプログラム。
 
 
 
偶然だが諏訪内さんのお父様はIBM勤務時代の会社の大先輩でもあり一緒にお仕事する機会もあった。世の中は本当に狭いものだ。ブルッフは少し挑発的に諏訪内さんが仕掛け、オケが本気に呼応する。指揮者のオラモ自身がフィンランド放送交響楽団のコンサートマスターだっただけあって合わせの呼吸はピッタリ。高音域でのヴィヴラートが細かすぎるように感じたが、諏訪内さんのストラドが奏でるしなやかで気品のある見事な音はブラボー。
 
休憩後のマーラー交響曲第1番はちょうど先日同コンビでのCDがリリースされたばかり。レコード芸術誌3月号に宇野功芳氏が厳しい評論を書いているがコンサートは違うだろうという期待で席に着いた。しかし宇野氏の言うとおり、例えば第1楽章はピアニシモに慎重になりすぎるがあまり音楽が痩せてしまいいつまでたっても吹っ切れないまま終わたかって感じ。それに各楽章とも場面替りやコーダの終音が短くそっけないのが残念でノリントン流のピリオド奏法を現代楽器で模しているのかと錯覚したがそうでもない・・・第3楽章冒頭のコントラバス・ソロは美しい女性首席(昨年12月のストックホルムでもこの女性奏者だった!)が小さい体からは想像できない素晴らしい心の歌を聴かせてくれた。終楽章は期待を大きく上回り、ヴァイオリンの左右対称配置が見事にハマっていた。(ちなみに、ヴィオラは第一ヴァイオリンの隣、つまり舞台下手で、ラトルが指揮するベルリン・フィルと同じ) 練習番号34と54では弦楽器が16分音符の音型で全てダウン・ボウで弦にぶつけて野性味たっぷり。練習番号55からはホルン奏者全員に加えてマーラーの指定どおりにバンダのトランペットとトロンボーンも各1本のこらず立ち上がって演奏したシーンは心底身震いした。
 
 

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ミスターSの奇跡

性懲りもなくブルックナーを聴いている。昨日紹介したコバケンの交響曲第4番以上に感動したCDが、ミスターSことスタニスラフ・スクロバチェフスキが2007年から常任指揮者を勤める読売日本交響楽団とのブルックナー交響曲第9番のライブ録音(2009年9月23日東京芸術劇場)だ。
 
 
 
思い起こせば、2007年シーズンに読響の常任指揮者就任披露でブルックナー交響曲第4番で終楽章でスコアにない銅鑼を使うという離れ業で深淵な解釈を日本の聴衆に披露し、2009年シーズン終了の3月に同交響曲第8番という大曲でそのポストを去るミスターSのブルックナーは、私の中ではチェリビダッケもヴァントも凌ぎ、朝比奈隆と共に神様的存在なのだ。そんなコンビの交響曲第9番がブラームス・チクルスと別建てで急遽発売されたのはファンにとっては"奇跡"の贈り物に等しい。普段聴こえない副声部がふっと沸き立ったり、ブルックナー独特のトレモロと管楽器の絶妙のバランスをギリギリの線で主張しあったり。もうこれ以上何も足す必要がない。録音もライブながら素晴らしい響きで奥行きのあるブルックナー像を見事にキャプチャーしている。ミスターSの在任期間中奇しくもN響はアシュケナージ退任で常任指揮者不在となり求心力を失った。この間明らかに読響の充実ぶりに軍配が上がる。3月のサントリーホールでのブルックナー交響曲第8番コンサートは残念ながらSold Outでチケットを入手できなかったので是非ともCDでの発売を切望する。
 
 
 

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炎のコバケンの《ロマンティック》

 
炎の指揮者コバケンこと小林研一郎がマーラーから旅立ち、いよいよブルックナー演奏でも独自の世界観を聴かせてくれた。日本フィルとの2009年4月のライブCDは、交響曲第4番《ロマンティック》。同作品ではコバケンの指揮者人生初だそうだ。同作品のCDは既に70種類(最近正確に数えたことがないのだが・・・)以上をコレクションしているが、その中でもスコアのテクスチャーを着眼大局でじっくり眺め、スケールの大きな孤高のブルックナー・サウンドを披露し極めてユニークに存在となった。CDにクレジットはないがハース版を使用していると思われる。しかしコバケンには使用楽譜の版など関係ない、時折聞こえるコバケンの唸り声も音楽の一部となった真にコバケンのブルックナーなのだ。
 
  
 
惜しむらくは日フィルの技術力。金管は渋めに抑えられ木管も透明感がありブルックナーらしいが、特に第2、第3楽章ではヴィオラとチェロ・パートが決して一流とは言えないのが残念。そんな不安を第3楽章スケルツォのコーダでコバケンは打ち消してくれた。スタッカート付きの四分音符をまるでマーラーのシンフォニーのようにテヌートしているのには驚いた。後のフィナーレはそのまま安心してコバケンに体を預ければよい。一気に頂点へと誘いでくれるコバケン独特の世界なのであった。
 
 
 

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