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5月, 2012 のアーカイブ

サンフランシスコ交響楽団100周年

 

一週間にわたるサンフランシスコでの仕事も無事終わり、最後の夜は今 シーズン100周年を迎えたサンフランシスコ交響楽団の定期演奏会にデービス・シンフォニー・ホールに出かけた。今宵はマイケル・ティルソン・トーマス(MTT)の指揮でマーラー「花の章」、シュニトケのヴァイオリン協奏曲第4番(ソロはコンサート・マスターの アレクサンダー・バランチック)、そしてベートーヴェン「田園」。1995 年から音楽監督を務めるMTTと同オケとの絆は根強く地元でも大人気でパトロンも多い。

「花の章」は後に交響曲第1番「巨人」となる作品に初演当時含まれていた楽章。私も偶然10月に演奏することになっている。なんとしなやかな演奏だろうか。MTTはマーラー指揮者としても高く評価されているだけあって隙がないし余裕と見通しのよさを感じる。トランペット・ソロはバランスといい音色といい完璧だろう。

続くシュニトケ(1934-1998/旧ソ連のドイツ・ユダヤ系作曲家)は初めて聴く作品。いきなり学校の授業開始の鐘(?)と同じ旋律から始まる。マリンバ、ビブラフォン、ピアノ、チェレスタ、ハープシコードなど多彩なパーカッション・セクション9名が活躍するのも面白い。ソロ・ヴァイオリンはG線をペグで下げたり上げたりする奏法も見物だったし、サブのヴァイオリン・ソロが客席から演奏するなど様々な演奏上の趣向がこらされていてCDではこの面白さは味わえないだろう。バランチックとMTTのコンビでは2003年の再演ということもあり勝手知ったる安定感がある演奏でMTTの統括力が光った。終演後は鳴り止まない拍手で包まれていた。

休憩後の「田園」はオケ編成を減らし(弦は上から11+9+8+6+4人で倍管なし)室内楽的な響きを指向していた。第1楽章ではヴァイオリンやチェロを所々ソロにして響きを薄くするなどの工夫もあったが、総じて馴染めなかったというのが正直な感想。MTTなら内声部でもっと悪戯したり弾力性のある変化をつけたりできたはずなのに現代奏法において純粋な音だけで勝負しすぎていたのでは。マーラーであれだけの共感を創り上げるオケとは別人だった。一言でいえばBGMのように耳に届くだけで、汗をかかない演奏と表現したらよいだろうか。

ロビーでは100周年を記念した展示がいろいろあった。そのなかで先代のヨーゼフ・クリップスから音楽監督に指名された当時35歳の小澤征爾との7年間のパネルがあった。オザワは頑張ってたんだなあ、日本人の誇り・・・明日、帰国します。あっ、ちなみに下右の写真はMTTの指揮棒と「田園」のスコアです。