人生を豊かにする音楽・居酒屋・旅にまつわる気ままなブログ

10月, 2011 のアーカイブ

ドゥダメル&ロス・フィルの蜜月

飛行機の都合でアリゾナ州フェニックスからロスに移動して一泊。夜に地元ロサンジェルス・フィルハーモニックの定期演奏会があったのでチケットを手に入れてウォルト・ディズニー・コンサート・ホールに出かけた。今宵は、ジョン・アダムスの「Short Ride in a Fast Machine」、メキシコの作曲家エンリコ・チャペラの電子チェロのための協奏曲「MAGNETAR」世界初演、そしてプロコフィエフの交響曲第5番というプログラム。指揮はもちろん地元で大人気の若手注目株、グスターボ・ドゥダメル。現代作品が前半2曲並んでいる割に会場はほぼ満席、ドゥダメルの人気が窺える。ウォルト・ディズニー・コンサート・ホールはエントランスやロビーがゆったりした空間で形成されてモダンな造り。舞台を取り囲む形で配置された客席はどこからも眺望しやすく、木製を基調としたデザイン、特に舞台中央に配備されたたパイプオルガンが美しい。ディズニー家が相当に資金を費やしたのも分かる。1曲目のアダムスは現代アメリカを代表する作曲家。鋭いリズムが様々に変化する約4分の作品に対して、ドゥダメルは正確さを基調とした棒さばきでシャープな音楽の要素をリードした。続くチェロ協奏曲は世界初演。ここでいう電子チェロとは、YAMAHAのサイレント・チェロをPCと接続し、ロックのエレキ・ギターのように音色を七変化させる作品。ソロは来日したこともあるイケメン・チェリストのヨハネス・モーザー。日本では当たり前のようなYAMAHAのサイレント・チェロも米国では物珍しいらしい。演奏前にすこし解説があった。そもそも日本の小さな住宅で音量を気にせずにチェロを楽しむために開発された楽器だけに、アメリカのような住宅事情には必要なかったのかも・・・ この作品は予想外に楽しめた。冒頭は弦楽器セクションが楽器を使わず、両手をこすり合わせて音をだし、それから両手を拍手みたいに鳴らし電子チェロの伴奏をする。途中、完全にヘビメタかと思うようなチェロの使い方もあり、多種多様。難いこと言わずに身体が自然に反応したって感じの作品だった。終わったらブラボーと口笛の嵐。ロック・コンサートか?? これもドゥダメルの人気なのだろう。休憩を挟んでのプロコの5番がまた素晴らしかった。ドゥダメルがプロコのスコアを完全掌握し、オケの緻密なアンサンブル力を背景にガッツリした造形力と巧みな色彩感で勝負した演奏。ロス・フィルってこんなに上手かったっけ? 土地柄かチャイニーズ系の団員が多いこのオケは誰かが出しゃばるのではなく、オケ全体で広い音域と音色を紡ぎだすひとつの楽器のように機能していたのがとても印象的。見直しました、ロス・フィル!!!  ドゥダメルも貫禄が付いてきて振り方がどことなくアバドに似てきたと感じるのは私だろだろうか・・・終演後、ギフト・ショップでTシャツ、ロス・フィル指揮棒、サイン会に備えてモーザーのCDをお土産に。ロビーでモーザーのサイン会では写真もバッチリです。

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エッシェンバッハ&ウィーン・フィル来日公演


香港出張が1日短くなったので、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の来日公演に予定どおり行けたのは幸運。最初は諦めて誰かに譲ろうかとまで悩んでいたのだが。。。今年はクリストフ・エッシェンバッハの指揮で私の大好物のブルックナー交響曲第4番「ロマンティック」をメインディッシュに前半はラン・ランのソロで今年生誕200周年のリストのピアノ協奏曲第1番という豪華モノ。来週にスクロヴァチェフスキーが来日して同「ロマンティック」の公演があるが、米国出張なので今回は意地でも行きたかったのです。

来日初日公演ということもあり、かつこの作品に限り若手楽員を登用したためか、前半のリストは少しウィーン・フィルも探り探りのところがあり硬さがあったが、ラン・ランのピアノは天性の音楽性とたぐいまれないテクニックでオケと対話し対決する動的な演奏が魅力。エッシェンバッハ自身が元ピアニストということもありサポートは万全。みなとみらいホールのスタインウェイはすこし音が硬い印象を持ったが、アンコールでラン・センが演奏したリストとショパンの小品でスターダストのように静かに輝く音色には息をのんだ。

後半のブルックナーは完璧!!! これまで数多くの同作品の演奏会に足を運んだが人生ベストの体験だった。冒頭から相当ゆったりしたテンポを頑固に堅持。そこにウィーン・フィルならでは町の庁舎から一日の始まりを告げるウィンナ・ホルン。ああっ・・・こんな美しいホルン聴いたことない。その後静かな高揚を経て第1ヴァイオリンが練習番号A前の主旋律を楽譜指定より1オクターヴ上げて演奏、なんとニクイ演出か! (これはカラヤン&ベルリン・フィルもやっている。もともと改訂版の記述がこうなっていて古くはフルトヴェングラーやマタチッチも採用していた。) その後もどっしりとしたテンポ感に揺るぎはない。大きな造形を示すエッシェンバッハの棒にウィーン・フィルが深い理解と共感を示し、フレーズ毎に単調にならず細かいニュアンスがふんだんに盛り込まれる。私は北ドイツ放送交響楽団を指揮したエッシェンバッハの同作品のCDを持っているが、アプローチは同じでもひとつひとつの表現力はウィーン・フィルには敵わない。ノヴァーク版による演奏は第3楽章のトリオでも見事なハーモニーの深みを出す。終楽章もどっしりとしたテンポを貫きながら一切間延びせずエネルギーを凝縮。やはり伝統が成せる技なのだろうか。終演後のサイン会でエッシェンバッハとラン・ランのサインをもらう。ラン・ランのサイン会には数百名ならんでたと思う。エッシェンバッハのサインは昨年春にサンフランシスコ交響楽団に客演時ももらったけど、今宵の感動を直接伝えたくてサイン会に並んだ。エッシェンバッハに前述のヴァイオリン・パートの記譜と違う演奏を指摘すると、よく分かってくれた!と御満悦でした。

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